カタカナ用語

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去る14日、15日は国際癌フォーラム2012のゲストスピーカーとして招かれ、講演とパネルディスカッションに参加して来ました。

7月3日に行った出版記念講演は一般の方々が対象でしたが、今回の聴講者は90%以上が医師、看護師並びに医療に携わる人たちでした。

海外ゲストとしてテキサス州立大学MDアンダーソン癌センターからイエーヌ博士を招き、国内の癌治療や癌患者のこと更に癌体験者のクオリティー・オブ・ライフ(人生の内容の質や社会的生活の質)に関して大きな問題意識を持った医療関係者が集い、二日間に亘り熱のこもった討議が繰り替えされました。

テキサス州立大学MDアンダーソン癌センターはテキサス州ヒューストンのテキサス医療センター内にある癌治療、研究、教育、予防を専門とする大規模癌センターで、日本には同癌センターに匹敵するものはありません。

二日間に亘る各位の研究発表並びに白熱した討議は、現在の日本の癌治療に携わっている医療関係者の中でもっとも問題意識の高い人たちの集まりとしてとても評価できる内容のものでした。


今後とも癌治療、研究、教育、予防のためにこのような有意義なフォーラムが定期的に開催されることを切に願う次第です。

しかし、ひとつだけとても気になったことがありました。

それは、余りにも容易に英単語やカタカナ用語が発表や討論会はたまた議事進行の説明のときに用いられていることでした。


私は自分の講演のときに半分冗談で

『驚くことに皆さんの話されている言葉にとても多くの英語、カタカナ用語が使われています。恐らくイエーヌ博士は同時通訳が無くても半分ぐらいはお分かりになったのでは無いでしょうか?』

と話しました。

今回の大きなテーマの一つは

キャンサーサバイバーとサポーティブケア

という問題でした。

皆さんは キャンサーサバイバーとサポーティブケア と言ってピンと来ますか?

この中にある日本語と言えばキャンサーサバイバーとサポーティブケアの間にある『と』の部分だけなんですよね(笑)

日本語と言うのはカタカナが導入される前から直接的な表現を避けるために間接的な表現を用いて表現を穏やかにすることを試みると言う 芸術的な間接話法 が用いられて来ました。

『言外の意を理解する』とか『行間を読む』

などと言う表現はいまだに日本社会では一般的に使われている表現ですが、国際的に見ると日本語ほど間接話法が巧みに日常会話に取り入れられている言葉は余り無いと思います。

私は日本語と同レベルで4ヶ国語を理解できますが、いずれの言語にも間接話法はありますが、日本語ほどの高い比率で間接話法が取り入れられている言語はありません。

私は日本語における英単語他カタカナ用語は一種の日本人が伝統的に用いてきた間接話法の近代版だと捕らえています。


癌生存者と言う言葉が直接的過ぎるからキャンサーサバイバー、緩和医療と言う言葉が癌患者に良い印象を与えないからサポーティブケアという言葉に置き換えているわけですが、私には物事の本質をぼかしているようにしか聞こえないのです。

私は講演の最後を次のような言葉で締めくくりました。

『皆さん方がこの二日間使われていた英単語、カタカナ用語がこのような学会やフォーラムで同じことを専門的に共有している方々の間で使われているだけなら良いですが、問題は多くの場合はそのまま医療の現場で患者に対して使われていることです』

『連休明けに、皆さん方が医療の現場にお戻りになって患者さんと話すときに、「おばあちゃん、私は連休中にキャンサーサバイバーとサポーティブケアに関するフォーラムに行ってきたよ」と言うと、話はそこで終わります。 しかし、「おばちゃん、私は連休中に癌体験者とその肉体的、精神的な支えを考える勉強会に行ってきたよ」と言うと、「先生、我々のために良いことしてくださったんだね」と、感謝されるのではないでしょうか?』

と。










都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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カタカナ用語 への5件のフィードバック

  1. 木下陽子 のコメント:
    いいことに気がついて下さいました。本当に有り難うございます。
    私のような英語恐怖症には、カタカナ用語には本当に苦労しています。
    英語の辞書を引くにも引けません。今、心理学の勉強しているのですが、
    まず理解できないカタカナ用語をパソコンで調べるのですが、覚えられなくて四苦八苦しています。同じヘルスでも、プライマリ・ヘルス・ケア、ヘルス・フォー・オール、ヘルスプロモーション、メンタルヘルス、全くの素人には、何がどう違うのか、ここから挑戦してます。
    • 都倉 亮 のコメント:
      木下さん、

      使っている人間もまちまちに使っているのです。

      カタカナは近代版間接話法として使われている面が多々あります。

      日本語でいうと意味が直接的過ぎるからカタカナに置き換えて意味をぼかしているのです。

      私はこれは同じ民族のみで曖昧に行間を読みあいながら生きてきた名残だと思っていますが、今後世界基準で意見をはっきり述べなければならない時代には、明確に母国語で理解されていなければ相手側に真の意味を伝えられません。
    • 都倉 亮 のコメント:
      現場で次々と作られるカタカナ用語は辞書で引いても的確な言葉が出てこないケースのほうが多いでしょう。

      コメントに書かれたヘルス関係の用語もこれといった決まった意味で使われているわけでは無いと思います。

      本来の直接的な表現を和らげるためにカタカナ用語が使われているケースも多いわけですから、ある意味ではぼかしているに過ぎないわけです。

      政治用語でもマニフェスト(選挙公約、政権公約)、戦後レジーム(戦後体制)など立派な日本語があるにもかかわらずあえて意味をぼかしているんですよね。

      世界で日本以外に母国語の本来の意味を外国語を導入してぼかしている国は無いと思いますよ。

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