癌との闘い-27(新たな感動の芽生え)

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本『癌との闘い』の連載は、2008年8月から2010年12月までの二年間に亘る闘病記です。

以下は4月11日投稿の癌との闘い‐26のつづきです。

長い間忘れていた『ものごとに感動する気持ち』がひとつひとつ蘇って来ました。更に、いろいろ新しい事に対する興味もいろいろ湧いて来ました。

身体を鍛えること(まだリハビリ程度ですが)、読書、音楽を聴くことなど以前にも増して喜びを覚えるようになりました。娘にプレゼントしてもらったアイ・ポッドに、好きな曲をダウンロードして散歩中に聴くことが最大の楽しみの一つになりました。

味覚はまだ戻っていませんが、いろいろ新しい食べ物にもチャレンジしてみたいと言う意欲も出てきました。

『お腹が空く。何かが食べたい』ということを長い事忘れていました。食事は単に身体に必要な栄養補給手段でしかありませんでした。

食欲とはこういうものだったのだとつくづく思い喜んでいる今日この頃です。

私は現在四ヶ国語(日本語、英語、ドイツ語、スペイン語)話せますが、さらに新たな外国語を学びたいと思っています。60歳になるまでにあと二ヶ国語を日常会話程度マスターしたいと密かに考えています。

4月に米国のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで開催されるゴルフの祭典『マスターズ・トーナメント』のテレビ中継は、大学でゴルフ部に所属してから毎年私にとっては春の訪れを告げてくれる楽しみでした。

しかし、ここ数年は観たこともありませんし、トーナメント結果に付いても全く気にも留めていませんでした。今年はいまからワクワクしています。

大学時代ハンディキャップ0になってからゴルフは私の生涯の友と思っていました。

クモ膜下出血を患った後も、医師の勧めもありリハビリを兼ねて散歩代わりにコースを回りました。

しかし、最後にクラブを握ってから3年以上経ち、再びゴルフをプレーしたいという気持ちになることは無いと思っていました。今では、また広大な緑の中で白球を追う日を夢見ています。

一つずつ消えていくように失ったと思っていた感動や意欲がまた一つずつ蘇り、更に新たな事にチャレンジしたいと言う気持ちが強く湧いてくるのを感じます。

『明けない夜は無い』、『夜明け前が一番暗い』とは昔からよく聞いていた言葉ですが、正に夜明けの光が見えてきたという実感があります。

『全ての意欲を失って、最後には生きるという事に対する意欲を失う』という人間の死を選ぶプロセスの一つが手に取るように分かったのは、夜明け前の一番暗い時期だったのです。


健康も経済的な基盤の全てを失って、一つずつものごとに対する意欲が無くたっていった時期は本当に辛い時期でした。

自分には将来を明るく考える事が出来る日が来るなどとは思っていませんでした。

しかし、その時期を乗り越えれば長い出口のないと思っていた暗いトンネルの先にぼんやりと光が見え、その光は徐々に明るい光に変わって行きます。

また、時間的な要素も疲弊した心や神経を休める事においては大きな役割を果たしました。

『健康も経済的な基盤も全てを失った』

と思いました。

しかし、今では全てを失ったと思ったのは表面的な健康な部分の一面と物質面であり、本当は私にとって新たなスタートだったと思っています。

そして昔から心が挫けそうになった時に、心の励みにしていた孟子の言葉が鮮やかに蘇りました。

『天が重大な任務をある人に与えようとする時には、必ず先ずその人の精神を苦しめ、その筋骨を疲れさせ、その肉体を飢え苦しませ、その行動を失敗させ、行おうとする意図と食い違うようにさせるものだ。これは天がその人の心を発奮させ、性格を辛抱強くさせ、出来なかったことを出来るようにさせるための試練である』

つづく

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
カテゴリー: 癌との闘い タグ: パーマリンク

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