潤滑油

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欧米ではユーモアは緊張した雰囲気を和らげるための潤滑油だと言われユーモアのセンスを持ち合わせているかどうかを重視しますが、日本ではユーモアは日常の緊張を和らげるために殆ど役立っていないような気がします。

米国のレーガン大統領は共和党員でしたが類稀なるユーモアのセンスの持ち主と言われていました。

銃撃にあって病院に搬送される途中でも心配して付き添うナンシー夫人に

“I forgot to duck.(弾が飛んでくる時にかがむのを忘れちゃったよ)”

とウィンクして言ったといいます。


また、搬送された病院で手術を担当する医師団が緊張している姿をみて

“I hope you all are Republican.(君ら全員共和党員であることを願うよ)”

と言って医師団の緊張を和らげたとも言います。


まあ、レーガン大統領は特別な存在であったとしても、欧米人と遣り取りしていると真面目な話の合間にところどころ潤滑油としてのユーモアが交じります。

息の詰まるような交渉を行っていてもそこにユーモアが交じると、そこにはとてもいい一種の『間』が生まれ次の議論にスムーズに繋がっていくケースが多々あります。

北欧の人たちと話すと、必ずと言って良いほど北欧の他の国の人たちをさかなにしたジョークが話されます。

スウェーデン時から聞いた話ですが、

スウェーデン人とデンマーク人とノルウェー人がヤギ小屋に入って我慢比べをしようという話になったそうです。

ヤギ小屋というのは臭くて有名だそうです。

三人がヤギ小屋に入って5分後にスウェーデン人が

『アーッくせー。こんなところ耐えられない』

と言って出てきたそうです。更に5分後こんどはデンマーク人が

『もう限界だ。これ以上いたら死んでしまう!』

と鼻をつまみながら出てきたそうです。更に5分後

『こんなに臭いヤツは初めてだ。とてもじゃないけど耐えられない』

とヤギが飛び出してきたそうです。


詰まり、この場合さかなにされたのはノルウェー人ですが、それぞれの国の人たちが隣国の人たちのことを罪の無いジョークでさかなにし合って楽しんでいます。

翻ってわが国ではどうでしょう?

当然のことながら現在の日本の政治家にレーガン大統領の様な気のきいたユーモアを期待することなど到底期待出来ませんが、テレビを観ていて少しは国民に対するメッセージや記者団からの質問に対しても毎度同じの決まり文句ではなく答えられないかのかと思います。

政治家にとって大切な要素は如何にきちっと自分の考えを国民に向けて述べるかですが、そこにおいて単に紋切り型の答弁だけでは全く聞く方の興味をそそりませんよね。

日本にも伝統的な落語と言う『話芸』があるのですから、少しはユーモアのセンスを磨くために勉強したら良いと思います。

また、日本人が隣国のことを罪の無いジョークでからかうこともタブーになっている感じがします。

民間レベルでは親しくなってきている隣国に対しても一日も早く打ち解けたユーモアを交えながらお互いの国のことを語れるようになって欲しいものです。

さて、過日新聞で日本の病院の勤務医の勤務状況に関する日本外科学会の調査結果が公表されていました。

それによると外科医の7割が当直明けの手術を経験し、うち8割が手術の質が低下を実感しているとのことです。

医療事故に繋がりかねない体験も何と4%あったという調査結果です。

何と100人手術したら4人は医療事故に繋がりかねないような状況で手術を受けているのです。

恐ろしくありませんか?


私が2008年の12月に左首リンパ節を廓清(取り除く)手術をしたときは朝一番の手術でした。

当時外科医の勤務実態を何も知らなかったのでそのまま身を委ねましたが、もし知っていたらレーガン大統領にちなんで一言

『先生方皆さんが今朝は当直明けでないことを望みます』

などと言っても全くユーモアとして受け取って貰えないどころか、これから始まる手術に悪影響を与えそうですね。

ユーモアというのは言う方だけではなく聞く方のセンスも大切ですからね(笑)






都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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