契約概念

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日本人が勤勉と言うことは日本人のみならず世界中で認められていることです。

これは全くその通りで、私は日本人ほど責任感を持って仕事をする国民は見たことは有りません。

欧米社会でも確かに管理職以上の人間達は確かに物凄い責任感を持って仕事をしています。

しかし、これは日本人のそれとは異なり往々にしてその職務に対する契約及び報酬に伴った責任を果たしているにすぎないのです。

私が三井物産時代やその後会社経営をしていた時代を通じてよく欧米のビジネスマンから

“I am not paid to make such a decision.” ”I am not paid to do that.”


という類の言葉を聞きました。

日本語に訳すと

『私はそういう決断を行うための給与を貰っていません。』、『私にはそれを行うための給与は支払われていません。』

ということになりますが、果たして日本人の社会人で質問を受けてこのような回答をする人がいるでしょうか?

先ずいませんよね(笑)

しかし、欧米契約社会ではこの手の発言には日常的にいろいろな場面で遭遇します。

それは欧米社会が徹底した契約社会で、基本的に契約に書かれていること以外は行わないということが浸透しているからです。

これは契約書に書かれている内容を遵守しているといっても良いのでしょう。

契約に基づく雇用関係のあり方というものは日本社会でも以前に比べて重視されるようになって来ましたが、欧米諸国に比べれば無いに等しいようなものだと思います。

日本人の一般社会人で

『自分は会社とこういう雇用契約のもとで働いているので、これとこれは行うが、これは行わない』

などと考えて仕事をしている人間は皆無に等しいのではないでしょうか?


もともと島国で単一民族国家の日本では、他の民族との触れ合いが多民族国家と比べて少ないために物事を細かく規定しなくてもお互いに理解しあえ物事を進めていくことが容易に行われてきたのです。

それ故、日常的に契約という概念が殆ど必要なくても生活が出来てきたのです。

翻って欧米多民族国家では人種、宗教、言葉、政治思想などの異なる人たちが混ざり合っているわけですから、そこには日本でいう

『行間を読む』、『言外の意を察する』、『腹芸』

など全く通用しないどころか、そういう概念すら乏しいのです。


そこでお互いの意思を確認しあう唯一の手段は契約書ということになるのです。

病院で様々な治療や手術を受ける時に病院と患者の間で交わされるものの一つに

『同意書』

があります。

この同意書というものは一種の契約書です。

病院側が行う治療、手術に伴う様々な事柄が記載されていて、それに対して患者が同意して初めてその治療、手術が実施されるのです。

正直一般人には全く理解できない内容です。


私のもとに届く相談メールにも少なからずこの『同意書』に関する質問があります。

多くの場合はご家族からのお問い合わせです。

なぜなら当の本人は入院しているからです。


質問内容は大同小異で

『手術(治療)を受けるに際して医師より同意書を渡され、内容に同意するなら署名して看護婦に渡して欲しいと言われて署名したが、帰宅後読み直してみてとんでもない書類に署名したのではないかと心配している』

という類のものが多いのです。

実際に入院して治療、手術を受けたことのない方にはお分かりにならないと思いますので簡単に説明します。

例えば私の受けた化学療法の同意書には大体次のようなことが記載されています。

* 使用される薬の種類。
* その薬を使用することによって予想される副作用の列挙。
* 副作用の欄には最悪死亡する可能性。
* 同意書の最後には当該治療を受けた効果に関しては一切保証しないこと。


まあ、落ち着いて上記内容を読めば大体の方は不安になるでしょう。

因みに、書かれている内容は100%正しいのですが、しかるべく説明無しに同意書を読んで納得したら署名捺印するように言われたのでは患者及びご家族は不安になります。

医師から全く説明がなかったというお便りもあり、それが事実であれば言語道断だと思いますが、通り一遍の説明をしたとしても患者側が納得していなければそんなものは

『単なる医師の独り言』

に過ぎないのです。

この同意書に関して知人のスウェーデン人医師に聞いてみたところ、欧米諸国では病院側と患者とのトラブルに関しては昔より細心の注意を払っているので、治療内容に関する理解違いはとても少ないという話でした。

契約概念。

日本人も真の国際社会の一員になるためにもっと持たねばならない概念の一つだと思います。








都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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契約概念 への2件のフィードバック

  1. Rumiko Hughes のコメント:
    日本人(アジア人)は、当地でも良く働くとして重宝がられるケースが多いようです。協調性がありあまりConflictを生み出す事もないとされているようです。
    アメリカに進出している日系の大きな会社は、過去の経緯から、ローカルとの雇用関係も契約できちんとされているようですが、就労ビザを取得させた日本人従業員を続々を送り込む中小規模の会社は、状況がかなり違うようです。
    良かれと思って行う仕事も、評価の仕方は人によって違ってくるし、一定の相互合意ラインが記述される書面は、事前にあるほうがいいと思います。深刻な事態に発展する場合、Emailのやり取りも、第三調査期間-移民局、労働局、IRS当に対する証拠物となります。”郷に入れば郷に従う”で、当地では、やっぱり契約書は必要ですね。
    • 都倉 亮 のコメント:
      『郷に入れば郷に従う』

      という比喩に近い言葉は英語にも

      ”If you are in Rome, do what the Roman say.”

      というのがありますが、実際日本人は極めて従うのに対して欧米人は少し異なりますね。

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