癌との闘い‐16(医局間の連絡の無さ)

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本『癌との闘い』の連載は、2008年8月から2010年12月までの二年間に亘る闘病記です。

以下、1月25日投稿の癌との闘い‐15(癌患者と鬱病)のつづきです。



同じ病院内でも横の連絡が殆ど無いことも不思議でした。これは私が本書を通して言い続けている

『日本人の自分の属している集団以外に対しては排他的』

な部分と無関係ではないと思います。

医療専門用語はなかなか一般人には分かりにくい用語が多くあります。

院内で別の医局で診察を受けたときに、何回か専門的な部分は

「直接主治医に聞いてもらえますか?」

と依頼しました。

しかし

「大丈夫です。必要な事はパソコンで見ることができます」

と。

また、私の状態を正確に理解していないにも関わらず

「まあ、いいか?一応検査してみましょう」

というような発言もありました。

「先生、何がいいのですか?何がお分かりにならないのですか?」

「大体分かるからいいです。心配いりません」

と言うような遣り取りが普通に行われるのです。

医師側は普段患者と接しているのと同じ感じで私に接していたのでしょうが、癌の転移の有無を診察するにあったって

『大体分かるからいいです』

では堪ったものではありません。


私はいろいろな医局を回るに連れ、それぞれの医師が一番重視しているのは、

『医師同士または患者との対話ではなくコンピューターのデータ』

である事を実感しました。

そしてたまにはコンピューターの打ち間違いで、そのデータを見た医師が私の症状を間違って理解している事もありました。

そして、私がわかる範囲では訂正しなければならないこともありました。そういう時でも

「コンピューターに書かれている所見と違う事を患者が言っているけどどうなのか?」

と、私の目の前で直接電話での確認が取られた事は一度もありませんでした。


その時つくづく思った事は

『頭がしっかりしている時じゃないと病気になれない』、『もし、自分に大きな後遺症が残っていて自分の意思がきちっと伝えられなかったらどうなるのだろう?』

という事でした。

私は普段、人との直接の対話を非常に大切にしています。

会社でも一人の社員が同じ部屋にいる社員に対して口頭説明せず、連絡事項をメールで知らせるというような事が時折ありました。

目に余る時は、メールではなく相手に直接口頭で説明するように徹底させていました。

しかし、大病院では医局をまたいで医師同士が直接会って話すなり、電話で患者の事に関する意見交換をする事は稀のようです。

どの医師もオンライン上で見ることが出来るコンピューターのデータを判断基準として最重要視しているようでした。

医師同士が直接確認しあうことのほうが明確である事は言うまでもありません。

しかし、人との直接対話を避けたがる傾向が医療界にもはびこっているのでしょうか、それともセクショナリズムの歪なのでしょうか?

データがおかしいと思っても直接当該医局に確認することはせず、患者に聞くのです。

私の場合もデータに自分の事が何と記載されているのかも分からないので、返答に困った事もしばしばありました。

それ以上に自分の身体がどの医局にも全体として管理されていないという不安感が募るばかりでした。

人の命をあずかるという重大な使命を帯びている医療の世界では、また、人の身体をパーツごとにバラバラにではなく一つとして考えるなら、本来医局間の垣根など有ってはならないはずです。

しかし、現実的には医局間の壁が存在し、昔読んだ小説『白い巨塔』を彷彿させるような一面があることを知りました。

ある医局の医師が私に述べた所見がデータとして打ち込まれていなかった時に、その所見内容を他の医局の医師に口頭で伝えると、

「あの先生は良いことしか言わないから」、「私はあの先生の言う事は半分に聞いていますが、まあ、どちらの考えが正しいか都倉さんが判断してください」

と言われたこともあります。

私は、余りにも複雑怪奇な組織の中で翻弄されているような精神状態になり、ある段階から自分の身体は自分で守るしか方法が無いと考えざるを得なくなっていました。

それゆえ、経過観察や診察、検査を受けたときは概要をメモする習慣が付いていました。

つづく


都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
カテゴリー: 癌との闘い タグ: パーマリンク

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