癌との闘い-14(身体と心は別物ですか?)

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敢えて誤解を恐れずに言うと、私の感じた日本の医療制度に基づいた大病院の診療方法は

『人間の身体を細分化して一つ一つをパーツとして捉え、各医局は全体的な観点からではなく、あくまでも身体の一部のパーツの専門家です。自分の守備範囲のパーツ以外の事は全く関知しない』

という方法です。

しかし、その中でも

『何とかしてあげたいけど私の守備範囲では無いから主治医に相談して・・・科を紹介して貰ってください』

という非常に患者の不安感を和らげるようなアドバイスをしてくれる医師も居ました。

しかし

『そこから先は私の専門外だから自分には関係ない』

と非常に機械的かつ事務的に患者を突き放すような感じの医師も少なからずいました。

また、患者との対話を重視することなく、患者と向かい合うよりコンピューターを見ている時間の方が長い様な医師も一人や二人ではありませんでした。

患者として

『医療とは一体何なのだ?』、

『自分の専門分野に病んだ患部が有るかどうかだけが関心の対象で、心を持った一人の人間が苦しんでいるということに対して何も感じないのか?』、

『患者の身体と心は複雑に係わりあっていることが分からないのか?』


と思わざるを得ないケースも多々ありました。

パソコンでデータを見たり、所見を打ち込むより患者と向き合いながら患者と対話することのほうが大切であるはずです。

しかし、現在の臨床の場ではこの

『患者と言う人間』

に向き合って、患者の苦痛を理解しようとする部分が非常におろそかになっているような気がします。


大勢の患者を診なければならない事情はあるにしても、一人一人の患者に向き合う姿勢は時間の長短ではないのです。

医師個人が

『自分の診ているのは一人の人間であって一部のパーツではない』

という姿勢を見せるだけで、患者の受ける不安感は大幅に和らぎます。

また、病院の紹介でフォローアップ検診をしてもらう専門開業医の中には予約が利かないところが殆どです。

朝9時から開院であるにも関らず、9時に行くと既に2-3時間待ちなどという医院もあります。私の様にフォローアップする部位が多岐に亘ると、一週間で回りきれないこともしばしばありました。

身体に関しては再発、転移、異常が疑われた部位の検査に物凄く多くの時間を費やしました。

しかし、常に主治医を含めてどの医師も私が抱えている全体的な身体症状を理解してもらっていないことは大きな不安として付きまといました。

更に、

『自分の身体のどこかに癌が再発、転移するのではないか恐怖心』

は癌患者の抱く不安の一番大きな問題の一つだと思います。

検査結果がでるまで患者が襲われる再発、転移の不安感、恐怖感がどれだけ大きく、孤独に苛まれるかという精神面での苦痛に対する医師たちの理解度も高いとは言えませんでした。

精神面でのケアの話は病院側のどの医局からもから一度も持ちかけられた事はありませんでした。

私も毎月のように転移が疑われ、そのたびに当該医局で一からの検査を行うという方法を辿って来ました。

精神的にもかなり追い込まれていきました。

そして日を追うごとに極度の不安また不眠に悩まされるようになりました。経過観察の検診が近づくと

『今度は何処への転移が疑われるのか?』

という恐怖感に襲われ、精神的にもどん底に向かっていました。


しかし、身体部分と精神的な部分は別と考えているのか、癌の再発、転移におびえている私の精神面での治療は全くなされませんでした。

治療どころかアドバイスも一切ありませんでした。

本来は同時平行的に心のケアを通じて患者の不安を取り除いたり、身体の症状を楽にする試みがなされるべきでしょう。

何よりも一番大切な事は、医師が人間の身体と心は切り離せ無いと言う前提に立った治療をすることだと思います。

私の場合は、幸いな事に知人に家族ぐるみで20年以上のお付き合いのある心療内科医がいましたので、その先生に診て頂きました。

本来『身体と心』は分ける事は出来ず、『心身のケア』は同時並行的になされなければならないはずです。

しかし、日本の医療界の基本的なスタンスは身体は身体、心は心と切り離された医療が行われているように思います。

最近は癌患者や家族の心のケアをする『精神腫瘍科』という医局を設けている病院もあるようですが、全国に300人程度の専門医しかいないとのことです。

私の友人の診療内科医も癌患者の心のケアを専門としている訳では無いにも関わらず、かなり無理を言っていろいろ聞いて貰いました。

そういう意味で私は非常に恵まれていたと思います。

しかし、やはり癌患者を専門的に診ているのではないので、私の抱いていた癌に対する恐怖感、不安感は理解して貰えない部分は有りました。

身体と精神は表裏一体だということは、本来医療を行う上で基本中の基本のことではないのでしょうか?

特に癌の様な病気に関しては、外科的な治療、手術もさることながら癌患者の抱く精神的な不安面のケアを充実させることが急務であると確信します。

つづく

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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癌との闘い-14(身体と心は別物ですか?) への2件のフィードバック

  1. 喜多村裕子 のコメント:
    都倉先生
    ありがとうごいます
    本当にそうです
    人の身体と精神は表裏一体です
    身体と心は繋がっています
    主人も昨日定期検診に行き23日に検査結果を一緒に聞きにいきますが
    一番不安なのは本人です
    それを笑顔で家族は支えます

    毎週水曜日楽しみにしています
    寒さが一段と厳しくなってきました
    どうぞ都倉先生もくれぐれもご自愛くださいますように
    • 都倉 亮 のコメント:
      奥様のその姿が一番の治療です。

      恐らくお宅では良くテレビのドキュメンタリー特集で見られる癌患者を看病している家族の重苦しい雰囲気は無いと思います。

      我家もそうでした。

      私だけトコトン暗くなっていましたが、家族は全く違いました。

      天然なのでしょうか(笑)

      でも、結果オーライでした。家族が患者のペースに巻き込まれると家族全体が暗くなり逆効果です。

      今の姿勢を大切にして下さい。

      素晴らしいです(^^)

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