北欧の大森林

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私が経営していた会社は、ヨーロッパのモダンカジュアル家具をヨーロッパのオリジナリティーを失うことなく日本の居住環境、日本人のライフスタイルに合うようにデザイン、生産、輸入、販売を手がけ、そのマーケットにおいては日本のリーディングカンパニーでした。

デザインは当社デザイナーと北欧を中心としたヨーロッパの提携デザイナーが上記コンセプトでデザインを行い、生産は北欧を中心としたヨーロッパの7カ国の工場で当社ブランドの商品を製造していました。

2013年に株式を上場して私は後進に道を譲って第一線から退く計画でしたが、2008年8月に中咽頭がんが左首リンパ節に転移したレベル4の進行癌が発見されその後闘病生活を余儀なくされたため夢なかばで計画を断念せざるを得ませんでした。

当社で使用していた 『木材』 は、当時殆どの日本で販売していた木製家具で使用されていた熱帯雨林の乱伐による廉価な木材は一切使用せず、

『一本の木を伐採したら二本の苗木を植える』

という北欧の計画植林に基づいて伐採された世界最高級の木材のみを使用していました。

当社の商品はグッドデザイン賞を始めとする数々のデザイン賞をほぼ毎年受賞していましたので、デザイン性、ファッション性に注目が大きく集まりましたが、当社は同じぐらいの重要性をもって環境面の配慮を基本方針として打ち出していました。

世界異常気象の一因となっていた熱帯雨林の乱伐による木材の使用は一切しないこと、燃やすとCO2を排出する塩化ビニール(塩ビ)を日本の住宅業界、家具業界から無くすべきだと声を大にして訴えたのも当社が初めてでした。

お蔭で当社がまだ知名度の低かった初期段階では大手住宅メーカーなどから袋叩きにあったこともありました(笑)



北欧を中心としたヨーロッパ諸国には当社がある程度日本に於けるリーディングカンパニーとしての役割を果たせるようになるまでは、年に7-8回ほど私自身が出向いていました。

北欧諸国はインテリアのメーカーがあるのは殆どが地方都市です。

地方の空港に私が着くとメーカーの代表が迎えに来てくれ、工場に向かうまでの道中、車の左右に果てしなく繋がる白樺の大森林を眺めながらとても満たされた気分になったことを思い出します。

日本には

『子孫に美田を残さず』

という言葉がありますが、北欧には

『子孫に大森林を残す』

という言葉があり、そのためにきっちりとした計画植林を行なっているそうです。

このロマン溢れる計画植林の話を聞きながら白樺の大森林を眺めていると、いつも思い出したのがティーンエージャーの頃好きだったビートルズの美しい調 『ノルウェーの森』 でした。

しかし、北欧の大森林は 『白樺の大森林』 だけではありません。

デンマークのオラン島はコペンハーゲンの南約150キロのところに位置する島です。

面積は沖縄とほぼ同じぐらいですが、600基の風力発電の風車が立ち並んでいます。更に海上には世界一の規模の洋上風力発電設備が整っています。

その光景は正に圧巻です。

デンマークでは1973年のオイルショックの時に政府が原発計画を発表しました。

しかし、一部住民の反対を政府が聞き入れ、原発のメリット、デメリットを政府が非常に中立的な立場で纏め上げ、原発の是非を住民投票に委ねました。

その結果、国民は原発を導入しないことを決定し、これによって国による自然エネルギーに対する本格的な取り組みが始まったのです。

私は、デンマーク国民はこれによって

『エネルギーの選択だけではなく生き方の選択』

もしたのだと思います。


それも本来の民主主義社会のプロセスを経てです。

現在我が国では原発の是非を巡っていろいろな議論が展開されていますが、今ひとつ国民が納得出来る議論がなされていません。

その最大の理由は国民が自分たちに提示されている情報が正しい情報なのかどうか『疑心暗鬼』になっているからでしょう。

九州電力の『やらせ』ミーティングの様なことが平然と行われるのでは国民の真の信頼など獲れる訳がありません。

民主主義国家にとって最重要事項の一つは正しい情報の提供です。

デンマークの原発の是非を問う住民投票も、政府の中立的な原発のメリット、デメリットを示した情報に基づいて行われたのです。

日本も見習わなくてはならない一面です。








都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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