線引き

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昨年の8月27日に行なったPET-CT検査の結果、左鎖骨上リンパ節に癌の転移が確認されました。

その後、結果的に手術、化学療法と放射線の併用治療を受けることになりました。

PETとはPositron Emission Tomography(陽電子放出断層装置)の略で、CT やMRI などの形をみる検査とは異なり、細胞の活動状況を画像で見ることができます。

さらにCTを組み合わせたPET‐CT検査で、PETの機能(糖代謝)画像とCTの形態画像との融合画像が得られ、診断精度の向上が図られ現在全身の癌の診断の最も精度の高い検査方法と言われています。

2次元、3次元の併用などフレキシブルな画像処理によって、小さながんの発見や良性・悪性の適切な診断が可能となり、より正確な治療へと貢献するというのが謳い文句なのです。

私の場合は、2008年8月に中咽頭癌が左首リンパ節に転移したレベル4の進行癌が発見され、同年年末までに癌の三大治療を全て受けました。

その後2年間は半年ごとにPET-CT検査を受けましたが転移、再発は確認されず、上記一年ぶりに行なったPET-CT検査で左鎖骨上リンパ節に2.5cmの癌の転移が確認されたのです。

最大リスク期間の二年間を2011年の正月で乗り切り、その後の転移、再発の可能性は極めて少ないということだったので、転移が確認された時は私以上に主治医が気を落とし、私が

『先生、しようが無いですよ。現実を踏まえ出来ることをやって下さい。』

と語りかけたのを家内が聞いていて

『医師と患者の会話とは思えない』

と言っていました(笑)

しかし、私と主治医の関係は医師と患者の関係を離れたら歳の離れた弟みたいなもので、子育てなどのプライベートな相談も受ける間柄です。

今まで二回ずつ受けた手術、化学療法と放射線の併用治療の前にも必ず目を見合いながら握手を交わして、

『先生、宜しくお願いします』

『頑張ります。最善を尽くします』

と言って手術、治療に入ることが慣例化され、私から見れば共闘の同志なのです。

今回の転移をもっと早い段階で発見できなかったことに関しては周りからいろいろな意見がありました。

私の事を心配してくれている方の中には転院を勧めて下さる方もいました。

しかし、私のこころは

『明鏡止水』

の心境で、今回も転移した癌を取り除くまでの手術、治療は全面的に主治医にお願いすることにいささかの迷いもありませんでした。

どこどこの病院に『当該部位に関する最高権威がいる』、『ゴッドハンドと言われる外科医がいる』

などと言うことは私にとっては二の次、三の次のことです。

何にも増して重視すべきは、医師と患者の

『信頼関係』

で、これは、日々私に相談メールをお送り下さる方々にも繰り返し伝えていることです。


それゆえ、私は主治医の方から

『他の病院の方が今回の手術、治療は万全の体制で臨めるのでそちらをお勧めしたい』

という申し出が無い限り全て主治医にお願いすることに決めていました。


結果的には、今回も姿を変えてより強力な形で戦いを挑んできた化け物を撃破できたことが2011年12月6日に行なったPET-CTの検査で確認されました。

それでは、PET-CT検査は全能の検査なのでしょうか?

ある線引きをしたらそう言えるかも知れません。


詰まり、がん細胞がPET-CTで検出来る大きさに達していたら他の検査では分からなくてもPET-CT検査で検出することが出来ます。

しかし、仮に癌細胞がPET-CT検査で検出されないミクロの単位で存在していた場合は話は別です。


昨年末、ある偶然のご縁で癌の予後治療に関する世界的な権威の医師とお目に掛かり、初対面ながら4時間にも及ぶお話をさせて頂きました。

手術、治療を受けた病院の今後の経過観察と同時並行的に予後はご自身が責任を持つという心強いお言葉を頂いたので、早速年初先生のいらっしゃる病院に伺いました。

全国の医師に見放された癌患者ほか難病を患っている患者が多数先生を頼り来院していました。

そこで当日私にかけた検査、治療時間はなんと5時間に及ぶものでした。

検査、治療内容は、問診、触診、血液検査、レントゲン、鍼治療などでしたが、血圧測定だけでも

『特別な血圧計で安静時血圧2回、立位血圧を5回測定する』

という念の入れようで、血液検査の白血球の値を測定するときも

『単に白血球の数値を測定するのではなく、白血球内の好中球他二種類の顆粒球の値、鍼治療前後の血中活性酸素の数値の測定』

を詳細に行い、私の身体の中がどういう状態になっているかをPET-CTを遥かに上回る精度で検査をして貰いました。

その結果、PET-CT及び今まで行なったいろいろな検査で全く分からなかった私の体内の状態が限りなく浮き彫りにされました。


そして、現在体内で戦っている免疫を更に強めるために漢方薬を始め定期的に鍼灸治療も取り入れた体制で臨んで行くことになりました。

この五時間は私の今までの三年半に及ぶ諸々の検査の中で一番納得が行く検査で、今まで抱いていた多くの疑問点が解消されました。

しかし、ひるがえって現在の一般的な癌検診の状態をみてみると、PET-CT検査でも高額なため、癌の疑いが濃厚な患者もしくは癌治療を受けたあとの検査目的以外では一般的とは言えないのが現状です。

更に、大勢の患者を言わば流れ作業的な検査で検診して行かねばならない医療体制では、一人の患者の診察に合計で五時間をかけることなど到底不可能で、検査方法もどこかで

『線引き』

することを余儀なくされます。


例えば、癌の検査の代表的な検査でエコー検査と言って超音波でがん細胞の有無を測定する検査がありますが、この検査を行なった結果、

『怪しい細胞が0.8ミリ以上だと更なる精密検査の対象になりますが、0.8ミリ未満だと対象にならないのです』。

この0.8ミリ未満の細胞が生きている癌細胞である可能性もあるわけで、さらにはエコー検査では検出されないミクロの癌細胞が存在している可能性も有るわけですが、現在の癌検診では

『癌の疑いは無い』

という診断になります。

この場合、0.8ミリ以上か未満かの

『線引き』 

が未来を大きく左右する可能性が有るわけです。


それでは、全ての患者が私の受けたような検査を受けることができるでしょうか?

それは残念ながら、現在の日本の癌検診のガイドラインに基づくと出来ません。

一人の患者の検査に数時間をかけることも難しいのが現状の医療体制です。

それにも増して、個別に医師に相談することは可能ですが、現在の日本の医師で果たして私が受けたような検査の重要性をどれだけ理解しているかどうかは甚だ疑問です。

あるところで

『線引き』

がなされ、その線のどちら側にいるかでその後の人生が大きく左右されることが無いように、私自身が今後更に声を大にして訴え続けたいと思います。












都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
カテゴリー: 健康 タグ: パーマリンク

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