医師の独り言

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私にご連絡下さる方々の中には相当数の医師を始めとした医療関係者が含まれています。

現役の大病院に勤務している医師、大病院の医療体制に疑問を感じて飛び出した医師、開業医など様々です。

おかれている立場上、メッセージは私のプライベートウォールのダイレクトメッセージ欄かメールアドレス宛に送られて来ますので、皆さま方の目に触れることが無いのが残念ですが、全国に現状の医学教育、医療の現場を抜本に改革しなければならないと考えている医療関係者が多数いることは、嬉しい限りです。

しかし、それが実際の改革に繋がる運動になって行かねば、問題の解決にはなりません。

私はそういう良心の声も代弁できるように日々の情報配信、講演、雑誌に自分の見解を述べることにより、少しでも日本の村社会の改革に繋がるように微力ながら全力を尽くしています。

一月一日発行の月刊誌『致知』に聖路加国際病院の日野原理事長との対談記事が掲載されます。

校正段階で編集者の方には申し訳無かったのですが、私が語っている部分は殆ど私の言葉に加筆訂正させて頂きました。

それ故、お読み頂ければ私の考えが私の言葉で直接伝わると思います。

対談では、私の『癌との闘い』以外の今までブログで紹介していないこともいろいろ述べています。

お時間がございましたら是非ともお読み頂きたいと思います。

さて、医師は大きく分けると医学のそれぞれの分野の将来に向けた研究を行う医師と実際の患者の治療に携わる臨床医に分けられます。

双方共とても重要な役割を担っていますが、ノーベル生理学・医学賞を受賞するのは、圧倒的に研究者の方です。

これはノーベル賞のもともとの選定基準が基礎的な発見、発明、証明を重視しているため仕方がないことですが、患者にとってより大切な接点が有るのは臨床医の方です。

それでは、臨床医にとって一番大切なことは何でしょう?

それは、一にも二にも

『自分が診ているのは心をもった人間』

という強い自覚のもとに、患者の人間としての尊厳を重んじる姿勢以外の何物でも有りません。

全人的な医療面接法(バリント法)を創始したマイケル・バリント博士(1896-1970)は、

”Doctor as a medicine(医師の存在そのものが患者にとって薬としての効果をもたらさなくてはならない”

という言葉を残しています。

患者が医師に対して心からの信頼を寄せた時点で治療するのための一番重要な部分は解決されているのです。

私のもとに寄せられる相談の九割は、医師が必要最低限の気遣いと患者の人間としての尊厳を重んじれば回避出来ると断言します。

私は、2008年8月に始まった癌との闘いを経て、自分の病気に関してはかなりの勉強をし、普通の医師より理解していると思いますが、それでも全てを詳細に理解しているわけでは有りません。

しかし、治療内容に関しては100パーセント納得しています。

そして、全ての治療が始まる前に主治医と目を合わせ

『先生宜しくお願いします』

と言ってガッチリ握手を交わします。

主治医も

『頑張ります』

と答えて自然と互いの信頼関係が確認されるのです。

私が手術、治療に関する相談を受けるときに最も重視するのは、その方が主治医なり手術、治療を受ける医師を信頼出来るかどうかと言うことです。

医師と信頼関係が構築されて手術、治療を納得して受けるのと、医師との信頼関係が築けず治療内容も納得せずに受けるのでは天と地の差が生まれます

一方、医師の方も努力はしてもなかなか患者との信頼関係が築けないと悩んでいる医師もいます。

これは、本人の更なる努力も必要ですが、日本の医学部の教育制度に大きな欠陥が有ることに起因しています。

現在の医学部の教育は旧態依然とした、医師の大量生産が必要だった頃の化石の様な教育から脱皮していないのです。

医師に最も必要なのは『自分は心を持った人間の命を預かっているという心構え』で、ゴッド・ハンドとかその道の最高権威などと言われる評価は二の次、三の次です。

ある癌の最高権威と言われている著名な医師が、ある癌患者のことに付いて次のように雑誌に語っていました。

『Aさんは、他の病院の医師の治療方針が信用できず、私のところに来ました。』

『確かに前の病院の医師の治療方法には私も疑問を感じ、考えられる最高の治療方法を説明しました。』

『しかし、Aさんは私の言うことも聞かず次々と病院を転々とする癌難民となり、最終的に私のところに戻って来たときは手の施しようが有りませんでした』

『なぜ一部上場企業の社長まで勤めた人間があの様な判断ミスをおかしたのか理解に苦しみました』

と。

ここまで読めば十分でした。

この医師は何をもって最高権威と言われているのか調べてみました。

ある癌治療に画期的な効果をもたらす可能性のある治療方法の仮説をたてたようです。

しかし、臨床医として必要な『イロハ』すら心得ていません。

癌との闘いは鬱との闘いと言っても過言ではないのです。

まともな判断力が働くなら誰しも癌難民などなりません。

恐怖と不安に苛まれ、まともな判断力が無くなってしまうことが癌患者の一番怖いことの一つなのです。

そこには元一部上場企業の社長だったかどうかなど全く関係有りません。

幾ら立派な仮説をたてようが、この医師は臨床医としては失格です。

患者が離れていく医師は最も真摯に自覚する必要が有ります。

幾ら大層な事を述べても、それを患者が納得しなければ、そんなものは単なる

『医師の独り言』

なのです。

臨床医の人達には今一度自分達の日々の患者に対する発言が『独り言』になっていないかどうか良く確認して欲しいと思います。

皆さんの言葉によって患者の

『生と死を繋いでいる最後の絆』

が切れるようなことが有っては絶対にならないのです。

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
カテゴリー: 健康 タグ: パーマリンク

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