日本人の品質に対する感覚

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私は日本人ほどに優れた商品を生産出来る国民は世界でいないと確信しています。

NASAのスペースシャトルを始めとする世界の主要な商品で日本の技術が使われていない商品を探す方が難しいと思います。

最近では株式の時価総額で世界一になったアップル社の商品の一部も日本の会社の技術が支えていることも話題になりました。


工業製品に於ける生産能力並びに品質管理においては群を抜いていると思います。

他方、環境面に対する考え方はどうでしょう?

こちらも、京都議定書で合意された環境基準を他の先進工業国が守れないなか、日本だけは遵守すべく力を傾注しています。

京都議定書とは簡単に言うと地球温暖化の原因となる、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)などを先進国が国別に削減基準を設けると言う議定書です。

しかし、それでは日本人が全ての面に於ける環境配慮面で他国を席巻しているかということになると、必ずしもそうとは言えない面も有ります。


私の経営していた会社は、北欧を中心としたヨーロッパのモダンカジュアル家具を、ヨーロッパの良さを失うことなく、日本の居住環境並びに日本人のライフスタイルに合うように、デザイン、生産、輸入、販売を手掛け、その分野においては日本を代表する会社の一社でしたが、仕事を通じて日本人の環境に対する配慮面で疑問を感じるところが有りました。

それは、特に販売店経由お客様に商品を販売していた時は特に強く感じました。

当社の商品のを生産していたメーカーは、ISO9001、ISO14001を取得していた会社が殆どであることのみならず、当社自身が商品のデザイン面、品質面に勝るとも劣らず、環境に対する配慮に重点をおいていました。

因みに、ISOとはInternational Organization of Standardization(電気分野を除く工業分野の国際的な標準である国際規格を策定する為の非政府組織)の略で、他の日本企業か使用していたJIS企画の国際版で、欧米では全てISO基準で商品が判断されていました。

今では当たり前のISO規格も当時は日本企業では知らない企業が多く、

『JIS規格は取得していないのですか?』

などという質問を受ける時代でした。

JIS規格とは日本のみで通用するJapanese Industrial Standard(日本工業病規格)の略称です。

それ故、当社は世界の異常気象の原因の一つと言われる、熱帯雨林の無計画な乱伐による廉価な木材は一切使用せず、一本の木を伐採したら二本の苗木の植林をするという、北欧を中心とした国々の最高級の木材のみ使用していました。

また、燃やすと二酸化炭素(CO2)を発生する当時日本の住宅業界並びに家具業界の中心的な表面材の塩化ビニール(通称塩ビ)の使用も一切することなく、業界から無くそうと声を大にしていたのも当社でした。

そういう配慮の基にインテリアの生産をしておりましたので、当社が独自で保有していた商品管理センターで不良と認定する家具は、一万セットに一台という精密機械並のものでした。

海外メーカーからも当社の基準で商品を生産したお陰で、ヨーロッパのお客様にも品質が高まったと喜んで貰っているという報告もたびたび受けていました。

しかし、販売店からお客様からのクレームが有ったので直ぐに直接対応するようにとの連絡を受けることが時折有りました。

日本の販売店の多くは委託販売と言う一切独自でリスクを追わない販売形態を採用していることのみならず、お客様からのクレームも直接納入会社に対応する様に要求してくるところが殆どでした。


クレームの圧倒的多数は、商品には何の問題も無いにも関わらず、国内輸送過程において梱包材やダンボール箱に付いた汚れや破損などのクレームが目立ちました。何の為に梱包材やダンボール箱があるのかを販売店に説明しても、全く聞く耳を持たず、着払いで当社の倉庫に返品交換を要求してきました。

当社の商品は、組み立て家具に慣れていない日本人のお客さまでもプラスドライバー一本有れば組み立てられる様にデザイン面で配慮していました。

ヨーロッパでは当たり前の接着剤の使用も釘うち作業も必要なく、輸送コストを削減するために、限りなく梱包もコンパクトに仕上げていました。しかし、やはり輸送回数が増えることと返品の際、運送会社にきちっと説明をしないで送り返されると、往々にして当社の品質管理基準では、再梱包をして販売できる状態では無くなっていました。

ある段階までは販売店経由の販売ルートしかなかったので、細心の注意と情熱を持って生産した家具を廃棄処分にせざるを得ないことは断腸の思いでした。

当社がインターネット販売を本格的に考えたのは、この様な貴重な天然資源をみすみす浪費することなく有効利用を真剣に考え続けた結果でした。

今でこそ大型アウトレットモール等か盛況を極めていますが、当時はまだアウトレットと言う言葉すら定着してない頃でした。

アウトレット商品としてインターネットで3割引きぐらいて紹介したら、アップした途端に売り切れる現象が相次ぎ、しかも利益率は3割引きでも販売店に正規品を売るよりも遥かに高く、私にインターネットの直販に対する大きな可能性を実感するきっかけ作りをしてくれたのです。

当社はいち早くインターネット経由の直販に乗りだし、私が2008年8月に中咽頭癌が左首リンパ節に転移したレベル4の進行癌か発見された頃には当社のインターネット事業のメルマガ講読者数は50万人を超えていました。

もし、販売店経由の仕事が順風満帆なら、インターネット事業のへの進出はもっと後になり、インターネットのインテリア市場で日本のリーディングカンパニーになれたかどうかは分かりません。

癌との闘いの中でも何度も絶望感、挫折感を味わい、去年の夏には死がすぐ届くところにあり、最後の細い絆でかろうじて生と死の間が繋がっていました。

しかし、結果的に今ではそれまでより遥かに人生の中で大切なことを学ぶことができ、より大きな幸福感を味わうことが出来るようになりました。

世の中なにが幸いするか分かりません。

本当に


『人間万事塞翁が馬』


だと思います。

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
カテゴリー: ビジネス タグ: パーマリンク

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