癌との闘い-11(原因究明に関する各医局の姿勢)

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酷い眩暈、立ち眩みが頻発し、時には気を失う様な状態になる原因がどこにあるのかを調べるために脳、心臓の精密検査を受けました。

しかし、脳、心臓には個別に異常は無いという所見でした。

異常は無いと言われても、現実的には過去に経験した事の無いような眩暈、立ち眩みが続き、酷い時にはベッドから起きられないような状態が続きました。

椅子から立ち上がるたびに立ち眩みがしたり、眩暈が強くてベッドから起きられないことなどはかつて体験したことが無かったので、日々体験している症状を何度も訴え続けました。

しかし、脳神経外科、循環器内科では両医局とも脳、心臓には異常が無いので自分たちには原因は分からないという極めてビジネスライクの診断でした。

それは本当に原因不明の身体症状に苦しんでいる患者からすると、突き放された様な気持ちにさせる診断でした。

「どうしたら良いんですか?」

という質問に対しても

「主治医と相談してください」

という回答で

「主治医が分からないから院内紹介で診て頂いているのではないですか?」

と食い下がっても、脳神経外科医は

「脳に直接原因があるわけではないので分かりません。」

循環器内科医は

「心臓そのものには異常なしです。血圧の低下も心臓が原因じゃありません」

と。

私の身体に起きている症状に対しては、それぞれの医師とも自分たちの守備範囲には『病んだ患部や部位は無い』という姿勢でした。正に目の前にいるのは心を持った人間ではなく単に病んだ患部、部位があるか無いかという診かたでした。

そして、その姿勢は私を悩ませている身体症状は自分たちには関係ないという風に受け取れました。更に、そこには、患者の精神的、肉体的苦痛を和らげるのに手を貸そう言うような配慮は全く感じられませんでした。

腹立たしさと同時に正直に思った事は、

『この医師たちは自分が患者の立場で医師に同様の事を言われたらどう反応するのだろう?』

ということでした。

結果的に、いろいろな精密検査を受けた最終的な所見は、左首からあごにかけての手術痕が硬くなり頭に上る血流が悪くなって血圧低下を招いた事が主たる原因であろうという判断でした。

それまでは、どうして異常な眩暈、立ち眩みが起きているのか分からないという不安が募る精神衛生に悪い日々を過ごし続けました。

しかし、ここまでは序の口でここから先が本当の心身の苦しみとの闘いでした。

毎月の経過観察時に身体のいろいろな部位に異変を感じることを説明すると、そのたびに院内紹介で検査を受けるための当該医局の受診予約がなされます。

私の場合、原発巣が中咽頭なので、主治医は耳鼻咽喉科の医師です。主治医と副主治医を始めとする関係スタッフにはとても恵まれ、的確な治療及び手術更には心のこもった看護を施して貰いました。

しかし、主治医の専門は耳鼻咽喉であるため、身体の他の部位の異変に関しては、その部位の専門医局を院内紹介するしか手立てがありません。

では、どこの医局が私の身体全体に関して把握してくれているのかと言うと、どこも無いのです。

医局が細分化されていることは、専門的な治療にはいろいろ適した面が多くあると思います。しかし、病気の疑いが複数の医局にまたがる場合は、どこか一つの医局が全身に対して主導権を握って貰えないと、患者としては非常に不安極まりないものです。

私のことをとても心配してくれていた元駐日スウェーデン大使夫人でとても親しくお付き合いしていた方が何回も連絡を下さり、

『スウェーデンでは、貴方の様な患者の場合、身体全体の腫瘍の事を熟知している腫瘍内科の医師に加えて当該患部の専門医と精神科医若しくは診療内科医がチーム体制で患者の治療にあたります。貴方の受けている治療では、貴方の心身に掛かる負担が重過ぎます。カロリンスカ大学病院に紹介しますからスウェーデンに来て治療をして下さい』

と言う、心優しいアドバイスを貰いました。

カロリンスカ大学病院というとノーベル生理学・医学賞の受賞者を選定する大学病院で、世界有数の病院と言われています。

私の亡き母も、亡父が駐スウェーデン日本大使だった頃に胃癌が発見され、カロリンスカ大学で胃の全摘手術を受け、同大学の素晴らしい医療体制のことは聞いていました。

しかし、闘病生活の中で私の心身にはスウェーデンまで飛行機に乗って行く事すら考えられないような弱った状態になっていました。

それ故、有り難い申し出でしたが、丁重にお断りするしか術は無かったのです。

同大使夫人が説明してくれたチーム医療体制は、考えてみれば『癌の様な複数にまたがる医局が介在する可能性がある病気の』場合は、当然といえば当然だと思いますが、日本の医療体制の中で『癌治療』に関する取り組み方は、あくまでも『当該部位若しくは臓器』の専門医局が基本的に単独で行う医療体制なのです。

私の辿ってきた治療方法に対しては、その後何人かの医師の意見も聞きました。

中には違う方法も有ったという意見も有りました。

無論上述した、医局間の壁を取り払った『チーム医療体制』こそ本来あるべき姿だと思います。

しかし、私は、自分が辿ってきた治療結果は『現実の日本の医療体制』の中では正しかったと確信しています。

つまり、主治医から説明を受け、最終的に私が依頼した放射線/抗癌剤の併用治療。更に、手術及びその後の経過観察は最善の判断のもとで行われたと考えています。

つづく

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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癌との闘い-11(原因究明に関する各医局の姿勢) への4件のフィードバック

  1. 穴澤 百合子 のコメント:
    都倉さん、こんにちは。
    病気と闘いながらも冷静な判断をされておられる姿勢に感銘を受けました。
    原因究明に対する医局の姿・・・病気こそ違いますが私にも経験があります。
    辛いですよね。「私の科の病気ではありません・・・紹介状を書きます」と市民病院の中でたらい回し状態でした。そのうちに検査・検査で疲れてしまい受診するのを辞めました。
    最後には「診療内科」を勧められましたが・・自分の勘を信じて栄養療法をして改善しました。
    日本の医療制度(保険制度)は完ぺきではありません。薬だけに頼り過ぎのような気がします。
    アメリカやヨーロッパのように身体に負担の少ないサプリメントの活用もしてくれたら良いのになぁ~と思う時があります。
    日本でも自由診療の医師はサプリメントを活用していますね。何冊か本や雑誌で読みました。
    癌にフコイダンやレスベラトロールを使って成果を上げている医師にもお会いして話を聞いたこともあります。
    最近は初めて乳がんの内視鏡を開発した医師の講演会に行きました。
    私も癌家系なので今のうちから気をつけています。
    PET検査・・安心できる結果だといいですね。
    • 都倉 亮 のコメント:
      コメント有り難うこざいます。

      後ほどパソコンが届きましたらブログをアップして、詳細説明申し上げますが、検査結果はセーフでした(^^)

      日本の保険制度は素晴らしい反面、精神科、心療内科以外の医師は話をしただけでは保険点数にならないので、次から次へと薬を処方することによって保険点数を稼がなければならないという、悪循環を生み出し、膨大な量の薬が処方され製薬会社を潤わしています。

      しかも、多くの処方された薬は無駄に服用されたりごみ箱行きになっています。

      月刊誌『致知』の1月1日発行の2月号に、聖路加国際病院の日野原理事長と私の対談記事が掲載されます。

      書店では販売されていませんが購読される機会が有ればお読み下さい。
  2. 穴澤 百合子 のコメント:
    返信ありがとうございます。都倉さんのブログを飛び飛びに読んでしまい、コメントが前後しているかもしれません。すみません。
    「致知」は販売されないのでしたら購読する機会は?入手ルートを調べる方法ありますか?
    • 都倉 亮 のコメント:
      致知は人間学を学ぶ月刊誌としてその姿勢を30年以上貫き、各号各界を代表する人たちの対談記事、インタビュー記事に加え、現代日本社会が一番学ばねばならない古典などが分かりやす解説してある読み応えのある月刊誌です。

      サラッと読めるタイプの月刊誌ではありませんが、私は特に若い世代の何か本を勧めて欲しいと頼まれると推薦するものの一つです。

      今週中に私が対談する聖路加国際病院の日野原先生のことをブログで書きます。そのときに『致知』のこと及び申し込み方法にも触れますのでご参照下さい。

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