笑顔とユーモア

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私は幼少の頃両親から三つのことを常日頃言われたことを記憶しています。

一つ目は常に正直であれ。二つ目はいつもニコニコしなさい。そして三つ目は人の顔に笑顔を作りなさい。

一つ目の常に正直であれというのは三つ子の魂なんとやらで、私は皆から馬鹿正直と今までの人生言われ続けてきたぐらい裏表のないことは確かです(笑)


しかし二つ目のいつもニコニコしなさいというのは日本に14歳で帰国するまでは実行できたのですが、帰国後なかなか日本人の同級生たちに受け入れて貰えず、自宅に兄の友達から電話があって私がでると、私の日本語の話し方がおかしかったのか

「おまえんち毛唐(けとう)を飼ってんのか?」

などと言われとても傷つき、一時期引き籠りとは言いませんが無口になった時代があり、自然と顔からも笑顔が消えていきました。因みに、毛唐とは昔日本人が外国人、特に西洋人を蔑視する時に使っていた言葉です。


徐々に日本の環境にも慣れ、高校受験勉強に集中しなければならなかったこともあり、心の傷は自然と癒えていきましたが、14歳までは「君はいつでもニコニコしているね」とアメリカンスクールの教師にも言われていた、自然にいつも笑顔でいられる自分には戻りませんでした。

ですから、高校、大学時代の友人たちは私が余りにこやかな人間であったという記憶はないとおもいます。

しかし時を経てあるとき父に

「亮。レーガン大統領の笑顔は素晴らしい笑顔だよ。自分も会って握手した時のレーガン大統領の笑顔には理屈なしに魅了された」

と言われたのをきっかけにレーガン大統領の動向を一時期注目していた時期があります。今考えると亡父なりに昔のような笑顔が消えていた息子に対する何らかのアドバイスだったのかも知れません。

ロナルド・レーガン大統領はハリウッド俳優では一流では有りませんでしたが、その後政界に転出して長年カリフォルニア州知事などを務め、69歳の時に歴代最年長の40代目のアメリカ合衆国大統領として選出されました。

確かにレーガン大統領の笑顔は単に満面溢れる笑顔というだけではなく、相手にとても親近感を抱かせる笑顔でした。

私には不思議でした。レーガン大統領を見ているととても親近感を覚えるのですが、同じいろいろな人間でも相手を魅了させる笑顔の人は少なかったからです。

しかし、大領領になった直後に銃撃され、病院に運ばれる途中で心配して付き添っていたナンシー夫人にウィンクして

“Honey, I fiorgot to duck. (ねーナンシー。撃れた時に瞬間的に身をかわすのを忘れちゃったよ)”とウィンクして言ったといいます。

更に、緊張していた手術担当医師に向かってやはり

“I hope you are a Republican.(君が共和党支持者ならうれしいんだが)”

と言い、医者は本当は民主党支持者だったそうですが

「大統領閣下。もちろんです」

と答えると

「良かった。それなら手術は間違いなく成功するね。先生よろしく」

と言ったそうです。

これが生死を彷徨っている人間が夫人や医師と交わした会話なのです。


そして、1986年にスペースシャトルチャレンジャー号が発射から73秒後に爆発事故を起こし7名の乗務員が犠牲になった事故の追悼式で、一通りの弔辞をのべたあと、遺族に対して

「我々は星へと向かう際、時として力及ばず道半ばで果てることがあります。しかし我々はその痛みを乗り越え、さらに先へと進まなければなりません。ほら、空を見あげてみてください。チャレンジャーが空に消えた日に新たに7つの星が誕生しました。この7つの新しく生まれた星が今後の我々のチャレンジを見守ってくれるでしょう。」

と死亡した7人の乗務員を新たな星に例え、遺族たちを抱きしめる姿を見た時に、私は本当に人を魅了する笑顔とは、心からの誠意とユーモアの精神なしにはあり得ないと確信し、その後私なりにいろいろ努力を重ねました。

先月月刊誌の いきいきで 私の癌との闘病が掲載された時の私の写真の笑顔を見て、多くの人から良い笑顔だとお褒めのお言葉を頂きました。自分ではもう少し良い顔だと思っていたのですが(笑)

しかし、今回転移した癌の手術を受ける際に、手術間際に最後に執刀医に言った言葉は

「先生。よろしくお願いします」

でした。

その時、

「先生。これからやる手術は盲腸の手術でしたっけ?」

ぐらいのユーモアを交えた一言を言えていれば、少しはレーガン大統領の境地に近づけたのかもしれませんが、まだまだ自分の小物さを思い知らされました(笑)

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
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笑顔とユーモア への2件のフィードバック

  1. Rumiko Hughes のコメント:
    到知出版のサイトで東井義雄氏の”喜びの種をまく”の一部が紹介されており、感動しました。
    -引用-
    仏法に「無財(むざい)の七施(しちせ)」という教えがある。
    財産が無くても誰でも七つの施しができる、喜びの種をまくことができるという教えである。
    財産が無くて、どうして施しができるのか。何を施せるのか。

    『雑宝藏経(ぞうほうぞうきょう)』は、「仏説(と)きたもうに七種施あり。財物を損せずして大果報を得ん」として、七つの方法を示している。

    一は「眼施(げんせ)」──やさしいまなざし。
    二は「和顔悦色施(わがんえつじきせ)」──慈愛に溢れた笑顔で人に接する。
    三は「言辞施(げんじせ)」──あたたかい言葉。
    四は「身施(しんせ)」──自分の身体を使って人のために奉仕する。
    五は「心施(しんせ)」──思いやりの心を持つ。
    六は「床坐施(しょうざせ)」──自分の席を譲る。
    七は「房舎施(ぼうしゃぜ)」──宿を貸す。

    大きなことでなくともいい。人は日常のささやかな行いによって喜びの種をまき、花を咲かせることができると釈迦は教えている。自らのあり方を調(ととの)えよ、という教えでもあろう。
    -引用終わり-

    東西の洋を問わず、笑顔や思いやりは、人を魅了させますよね。
    • 都倉 亮 のコメント:
      本当に古今東西笑顔の重要性は言われ続けていますが、本当に人を魅了する笑顔は作り笑顔ではだめなんですよね。

      そういう意味では、るみ子さんは特に悟りを開いた方だとは思いませんがその天性の人を魅了する笑顔はやはり「天下の大物」なのですよ(笑)

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