『まさか』と『やはり』

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まさか と やはり。

前者はノルウェーで起きた惨事 後者は 中国で起きた惨事 に対する朝日新聞の 天声人語 の寸評でした。

同じ惨事でも まさか と やはり と一流新聞が区別して寸評を述べるように、日本に於ける両国の与えるイメージは異なるのでしょう。

しかし、20年間に亘り年に数回北欧を訪れていた私には、ノルウェーの惨事は まさか ではすまされないものを感じました。


北欧はノルウェーだけではなく、スウェーデンも、デンマークも平和で豊かな福祉社会を誇り、移民に関しては寛大な政策をとっています。

これは人道的な問題も大きく関係していますが、人口の自然増加では追いつかない部分を、移民政策によって補っているのです。

スウェーデンの郊外を取引先の車に乗せてもらい移動している途中に、突如アフリカ系住民が目に付く集落がありました。

私がスウェーデン人の取引先の人に質問すると、その集落は アフリカ難民をスウェーデン政府の保護の下に、スウェーデンで生活できるように教育を施す場所 との説明を受けました。

そして、日本の感覚だと 至れり尽くせり の環境の中、更に一人一人に 手当て も支給しているとのことでした。

そのスウェーデン人もその他多くのスウェーデン人と同様移民政策に関してはとても寛大な精神の持ち主でしたが、最後に一言

『我々の高い税金の中で賄われているのだから、税金の無駄遣いにならないようにして欲しい』

と言っていました。

更に、デンマークのコペンハーゲンの繁華街には、やはり他国からの移住者と思われる人達が大勢いて、中には通行人を呼びとめ何かを売ろうとしている人達も見かけます。

私が

『コペンハーゲンも町の様相が大分変わったね』

と言うと、取引先のデンマーク人が

『難民、移民の大部分の連中はとても真面目に学びデンマーク社会に適応出来るように努力しているが、中には政府の援助の下に教育を受けて更に手当てを貰いながら、デンマーク人の若者にドラッグなどを販売している連中もいるんだよ。』

『しかも、その教育費は全て我々の税金で賄われているのだからやってられないよ!』

と言っていました。

数多くの北欧訪問に伴い、この様な話を聞く機会が増えましたが、概ね 移民・難民政策 に対しては寛容でした。しかし、行き過ぎた保護によって自国民が割を食うことと、それらの保護が全て自分たちの税金から賄われている事に対しては、それなりにある程度の不満と苛立ちを感じているようでした。

今回の大惨事を引き起こした容疑者はノルウェー人で極右思想の持ち主で同国の移民政策にも異論を唱えていた人間だったそうです。

ノルウェーの政府要人がいち早く、

『この度の大惨事はとても悲しむべき事件だが、この出来事によってノルウェーの移民政策が変わる事は無い』

との声明を発表しました。

素晴らしい勇気のある発言だと思います。

米国に代表される多民族、多文化国家はいろいろな困難も伴う人類の平和共存のための壮大なる実験なのです。

日本は世界先進国の中でも移民、難民受け入れにはとても慎重な国家です。

他の民族、文化が混在しないことによって国の秩序、治安が比較的維持されているという面は確かに有るかと思います。

しかし、 同じ類だけで群れあい、異質なものを受け入れない日本の体質は ややもすると世界の流れから取り残されてしまいます。

世界全体で見た場合、先進国が途上国の移民、難民を受け入れていくのは時代の趨勢です。

今回のノルウェーの大惨事の被害者の皆様方には心よりお悔やみを申し上げたいと思います。

そして日本も、多くのノルウェーの人達の尊い命を無駄にすることなく、今回の事件をを決して 対岸の火事 として捉えることなく、日本の移民、難民受け入れ政策の糧にしなければならないと思います。


 

都倉 亮 について

1953年生まれ。幼少の頃11年ドイツで過ごし、アメリカンスクールに学ぶ。慶大卒後三井物産に13年勤務。その後会社経営を経て現在執筆を中心に活動。日本の素晴らしい面、世界基準に変えねばならない面を長年の海外生活で培った目で発信して行きたいと思います。
カテゴリー: 国際交流, 文化 タグ: パーマリンク

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